幡 豆 の 家


06.11.11


始めて問い合わせをいただいてから
2年以上の時を経て今日の日となりました。
敷地の変更などさまざまな経緯を経て
やっと地鎮祭にたどり着きました。

毎回感じることですが、
私の仕事はクライアントと密接に関わることが多く
いつもその責任を強く感じているのですが、
今回はそれをよりいっそう強く感じる仕事でした。

今日からはその期待と責任を現場で
お示しする段階に入りました。

初夏にはまた新たな「普通の建築(いえ)」ができます。
待ち遠しいです。
       


06.11.27


今日から本格的に現場が始まりました。
いつものように地盤補強から始まります。
今回は背後に山を背負っているので
地盤は良いのですが、本体がコンクリートということ
で万全を期して表層改良工事を行なうことにしました。
       


06.12.01


予定より1日多くかかりましたが、
今日で表層改良工事が終了します。

最終の出来映えと周囲との関係を確認に来ました。
施工途中、土が余るという連絡が入り
一部隣地に土を移動しました。
最終的にはその土も再度戻して予定通りの地盤が出
来そうです。

地盤の設定に間違いがなかったことを
確認できたのでひと安心です。

明日は捨てコン打です。
       


06.12.02


今日は早速、捨てコンの日となりました。
予定より少しコンクリートが多く必要でしたが
丸幸建設さんのていねいな仕事で
きれいに打ち終わりました。
週明けには墨出しをして、
いよいよ鉄筋工事が始まります。
       


06.12.05


本格的に本体の工事に取りかかる前に
アプローチのよう壁工事に取りかかりました。
入り口にみかんの木があったのですが、
残念ながら伐採せざるをえませんでした。

この敷地は始めからほとんど樹木が生えていなかっ
たので大掛かりな伐採をせずにすんだので気が楽だ
ったのですが、実をたくさん付けたみかんの木が1
本だけあったのでそれを撤去するのもなかなか心苦
しいものがありました。
       


06.12.09


今日から基礎の配筋が始まりました。
今回の鉄筋工事は私のいとこが経営する
神和工業にお願いしました。
3人兄妹の長男と次男が後次いで鉄筋工になりまし
た。現在は兄の亘が社長となり会社を切盛りしてい
ます。今回は弟の真がこの難しい仕事を引き受けて
くれました。彼のことは生まれた時から記憶があり
ます。今では30項半出一人前の職人になっていま
す。

学生時代の4年間、先日亡くなったおじさんのもと
で鉄筋工としてアルバイトをさせていただいたこと
は今となってはとても貴重な財産になっています。
       


06.12.16


今週いっぱいかかって基礎の型枠を施工しました。
今回の型枠もいつもご指名の岩田親子にお願いしま
した。当初スケジュールが合わず地元の型枠大工を
探していたのですが、ことごとく技術的に自信がな
いということで、結局3ヶ月工事を延ばしいつもの
ように岩田さんにやってもらうことになりました。

いつも普通にお願いしていることが、普通でないと
いうことを思い知らされる出来事でありました。
それぞれの職人にあらためて聞くことはありません
が私の仕事は全てにおいて特別な仕事のようです。
それを当たり前のようにやってくれる職人さんたち
に感謝!感謝!
       


06.12.18



今日無事に基礎のコンクリート打設が完了しました。
生コンのプラントもとても近く、
打設も滞ることなく、昼過ぎには無事完了しました。

毎回のことですが,水の量もギリギリにおさえてある
ので表面に水が浮くこともなく予定通りでした。

明日は壁の打継ぎ部分のレイタンスの除去のため
高圧洗浄機を持ってまた現場に来ます。
       


06.12.25


年内に壁の鉄筋は終わらせる予定なので
今日は墨出しをしました。

基礎の型枠ばらしも先週のうちに終わっていて
今日確認しました。
全く問題はありませんでしたが、
少し気がついたのは,このプラントのコンクリートは
少し白い印象を受けました。
        


06.12.27


壁配筋の工事が始まりました。
昨日の雨で1日順延となり、
年内の鉄筋工事が微妙となりましたが
年明けすぐに型枠工事の予定になっているので
どうにか間に合わせてもらうつもりです。
        


06.12.28


大分壁の配筋が建ち上がってきました。
イメージした形が現実のものとなろうとしています。
不安と期待が入り交じる
建築家としていちばん楽しみな時期でもあります。
        


07.01.05


今日が仕事始めになりました。
早速,壁の型枠の建てお越しにかかりました。
午前中は敷きバタといって枠を建てるベースの木枠
を設置し午後からは妻壁から建てていきました。
今週中に片面だけ建てて月曜日からは、
設備工事と電気工事等の配管工事にかかります。
        


07.01.20


屋根の型枠も大分出来上がって来たので
今日は大梁の配筋工事です。
何せ屋根が急勾配なので鉄筋工事も型枠工事も大変
です。特に型枠工事は木毛セメント板を打ち込みで
かつそれが仕上げなので大工には大変な仕事となっ
てしまいました。順調にいけば一週間後には壁のコ
ンクリートを打つ予定です。
        


07.01.25


屋根の型枠がほぼ完成しました。
過去に経験がないほどのボリューム感と
大胆な造形に大いなる期待と少しの心配が
入り交じっていましたが、今日目の当りにして
「自信」が「確信」に変わった日でありました。

背筋ぞっとするような感覚を覚え、
子供が生まれた父親のような心境で
一刻も早くお目にかかりたくなりました。
        


07.01.30


今日は壁のコンクリート打です。
40M3ほどの量ですが、午前9時から始まったコン打
も午後3時頃には終わりました。
屋根勾配がきついので締め固めには苦労しました。
屋根部分は同じほどのボリュームがあるので
1日で打つことは難しいので後日の予定です。
明日は,高圧洗浄機を使いレイタンスの除去の仕事
が待っています。
        


07.2.13


大工や鉄筋屋もそれぞれ忙しく
屋根の下筋工事が今日になってしまいました。
急傾斜の屋根にボイドスラブという複雑な施工なので
下筋を施工するだけで5人の職人で2日かかりました。
明日はボイドを設置します。
雨模様ですが、工程上強行する予定です。
        


07.2.14


今日は予想通り雨でしたが、
現場は予定通りボイドスラブの設置工事を行ないま
した。職人8人で一気にやりました。
そのため午後2時にはほとんど終わりました。
        


07.2.22



今日から数日、鉄骨屋の渡辺さんのお出ましです。
渡辺さんは「大西町の家」以来です。
あらかじめトップライトになるスチールパイプ800φ
の製作をお願いしていました。
下はそれを取付けているところです。

また、屋根勾配にそって亜鉛メッキを施した
アングルを取付けているところです。
これはコンクリート打設時の不陸調整と
コテ押えの区切り目地にもなります。
また意匠的にもアクセントとなり、
すっきりしたイメージを狙ったものです。
        


07.3.2



今日はこの工事の最大のヤマ場である屋根のコンク
リート打です。急勾配のコンクリート打は大変難し
い工事です。通常の固さのコンクリート何もしなく
ても自然に下の方に流れてしまいバイブレーターど
ころではありません。かといってバイブレーターを
かけないと密実なコンクリートは打てません。

したがって今日のコンクリートはほとんど流動性の
ない硬いコンクリートで打ちました。その硬さをス
ランプという言い方で現しますが今日のスランプは
10cmで打設しました。同業者が聞くとビックリする
と思います。おそらくこの堅さで打ったことのある
同業者の人はいないと思います。普段私はスランプ
12cmで打っていますが、私にとっても10cmという
のは未知のコンクリートでした。この差は大変大き
くポンプ車も詰まる可能性があったのでピストン式
の土木で使用するものをチャーターしました。

スランプ10cmはほとんど流動性がなくコントロー
ルはしやすいのですがコンクリート内に空隙ができ
やすくバイブレーターのかけ方も大変難しかったで
す。したがって、足で踏み込んでコンクリートをな
らす作業が大変でした。

下の写真は金コテで仕上げの作業です。
屋根も全く仕上げをせずにこれがそのまま仕上げに
なります。余分な装飾は一切排除し、「かたち」と
「存在」だけで表現しようと思っています。
        


07.3.08



屋根のコン打から1週間経ちました。
直後から壁の型枠を外し始め
昨日、ほぼ壁の型枠は外れました。
今日その出来を確認するために現場に行きました。

とても難しいコン打でしたので心配していましたが
その心配は全く意味のないものでした。
予想以上の出来にホッとしたのと
喜びがこみ上げてきました。

コン打はいつも一発勝負です。
良くも悪くも神様の授かり物として受入れるしかあ
りません。その緊張感がたまらないところです。
巧く打てた時はご褒美として喜び
良くなかった時は戒めとして反省します。

なんだか修行のようですが、すべからくものづくり
はそういう側面をもっていると思います。

下の写真は先日打設した屋根の写真です。
あまりにも無表情で幾何学的なその形態に
思わず圧倒されました。

これほど無装飾な試みは、私にとっても始めてです。

全くごまかしの出来ないその在り様は
自らの思いと実力を信じて決断した普請です。
        


07.04.05





久しぶりの現場です。
今週始めに4週のコンクリートの破壊試験の結果を
確認し型枠ばらしの指示を出しました。ちなみに破
壊試験の結果は設計強度の2倍近くの430kg/cm3
出ていました。コンクリートは予想以上にきれいに
打てていました。一部コンクリートが回っていない
ところや、バイブレーターのかけすぎで素が出来て
しまったところもありますが、やはりスランプ10cm
で打ったコンクリートは見るからに堅そうで決めの
細かな仕上がりでとても安心感のあるものでした。

今日で大方のばらしが終わり、これからは内部の造
作に入ります。それに合わせて今日大工さんに現場
に来てもらいました。そこで模型を見てもらい大方
のイメージを掴んでもらいました。その後いっしょ
に加工場まで行き、先日入荷した材木の確認してき
ました。

今回の建物は外郭はコンクリートで内部は
木造という2重構造の建物になっています。
木組みの美しさと<コンクリート打放しが
どのように止揚してくれるかが今から楽しみです。

そこでもう一方の主役とご対面をしてきました。
柱は20cm角の栗です。
梁材は吉野の阪口製材さんにお願いして入れていた
だきました。去年実際に吉野まで行き材料は確認し
て来たものですが製材したものをあらためて今日確
認してきましたが、その木肌の品の良さに鳥肌が立
つくらいでした。下の写真は、リビンングにかかる
6mを超える大梁ですが、一方の梁などはほとんど節
がありませんでした。

この後大工さんと加工の方法などを打合せして帰路
についきました。

10日ほど加工に入り、現場の建て方は4月中旬にな
る予定です。
   


07.04.10


木材の加工が順調に進んでいます。
来週の中頃までには加工も完了し、
現場での建て方の段取りに入れると思います。

現場では今日は設備の矢野さんが、
配管の取り出しをやっています。
コンクリートが堅くとても苦労しているようです。
     


07.04.20


木の加工も終わり、一昨日材料を搬入しました。
昨日から建て方が始まり、
明日までに建て方は完了する予定でしたが
どうやら来週前半までかかりそうです。

今回の計画は、コンクリートの壁と屋根に覆われた
空間に木組みを入れ込むという計画です。
全く違う素材で、面と線コラボレーション。
これがどのような空間を醸し出すかが
最大の楽しみでもあります。

いちばん気をつけたことは、コンクリートに
負けない木のボリュームと素材感です。
特に柱の寸法は最後まで悩みましたが
どうやら成功したみたいです。

来週になれば床の段取りが始まるので
それを確信できると思います。
       


07.04.26


今日は庭師の桜井くんにお願いして
床下の砂利の搬入と敷き込みをお願いしました。

大工さんは着々と仕事を進めています。
すでに木組みは終わり、床下地に入っています。
それも明日には終わる予定です。

今日は他にも電気のヒロ辻さんが仕事をしていて
今回は床下にエアコンを仕込んで
床暖房をするというため、その打合せをしました。

明日あらためて本体を搬入してから詳しい打合せを
行ないます。


07.04.27


床下地が順調に進んでいます。
今日は一月前から家具職人の宮島くんにお願いしておいた
枠などのナラの造作材が出来たので
現場に運び入れました。
しばらくはこの枠を納めるのに時間がかかりそうです。
今日は床の貼りかたなどの打合せもしました。

また床下に設置するエアコンも搬入されたので
その設置方法についても打合せしました。


07.05.02


大工工事も順調に進み、休み明けからは本格的に
開口部の枠廻りの加工取付けに入っていきます。

今は5月中旬以降の左官工事や石工事
などの段取りや手配で忙しいところです。


07.05.08


ゴールデンウィークも終わり、大工工事も
順調に進んでいます。
ここ数日は、出入り口や枠廻りの取付です。
写真の枠は来週までかかりそうですが
室内の出入り口は今週中に終わる予定です。


07.05.16


枠廻りもほぼ完了し、床の施工に入りました。
始めに敷居の取付から始まります。
何度も床の貼り方を大工さんと打合せし
どうにかベストな貼り方に落ち着きました。
床材は巾広(195mm)のナラ材です。
サンプルで提出したものよりも仕上がりは
とてもいいものなのですが、何せ巾が広いので
ソリや縮みが心配です。
来週いっぱい床貼りにかかりそうです。


07.05.21


床貼りは順調に進み、すでに1/4ほど終わりまし
た。今日は左官さん来ていただき、床の石貼りの準
備に入ってもらいました。今日は他にもテラスのブ
ラックスレートが現場に入りました。当初は洗い出
しの仕様でしたが、現場を見て独断で変更しました。

やはり完璧な設計は難しいものです。
以前であれば予算の壁に阻まれてここで妥協せざる
をえませんでした。今は自ら請負っていることで、
クライアントに承諾を得れば自由に決断できます。
このような環境はものづくりをするものとして、
とても恵まれていると感謝しています。

もちろん金銭的な負担や責任も重くなることですが、
完成度と満足感は何よりも代え難いものです。


07.05.24


テラスの石貼りが本格的に始まりました。
やはり石に変更して良かったと思いました。
二人で手際よく貼っていたので
どうやら来週始めには全部貼り終えそうです。

一月前に注文しておいた御影の敷居も
そろそろ出来てくる頃なので
来週中にはテラスも完了します。


07.05.26



予定通り御影石の敷居も出来上がり、今日現場に
搬入し、早速取付けにかかりました。玄関ドアの
敷居の取付も終わり、順調に進んでいます。

今日は大工さんは、お休みで
来週も床貼りが続きます。
貼り方に全く逃げがないので、手間がかかってい
るようです。
しかし出来上がりは期待できると思います。


07.05.28



テラスの石貼りも一部完了し、
窓枠などを順番に取付けています。
明日には足場も外れ、来週からは外構が本格的に
始まる予定です。

屋根ではスタッフがコンクリート改質剤(RCガー
デックス)の塗布を行なっています。
この塗料はコンクリートに深く浸透し
コンクリートの質を高めるものです。
クラックを発生を減少させ、防水効果も期待でき
ます。また、中性化も防ぐことが出来るため、
コンクリートの寿命が飛躍的に向上します。


07.06.06


今日から外構工事が始まりました。
今回も桜井くんの登場となりました。
今週は、雨受け側溝の設置です。
来週中には、植栽も終わり一気に
完成度が上がると思います。

今日は、はうすキーパーの矢野さんも現場に入り
外回りの排水工事をしています。


07.06.16



外構工事も大分すすみ、今日から植栽に入りました。
梅雨に入ったので予定通りには進みそうにありません
があと2日あまりで終わりそうです。
植栽計画は、ほとんど桜井くんに任せていますが、
彼の植栽は、見せようとする欲が全くなく
自然な計画でとても好感の持てるものです。
私好みで建物にも違和感なく合うと思います。

植栽が入ると一気に完成度が上がります。

内では左官の松田くんらが、
浴室の漆喰塗りの仕上に入っています。
数日前から下塗り、中塗りと行程を終え、
今日が最後の日となりました。


07.06.21


内壁の杉板貼りになりました。
巾が広い板なので反りや縮みを出来る限り
少なくするために、建具屋さんの力を借りて
パネル状にしもらいました。
写真は、巾900ほどの杉板パネルを貼っているところ
です。この前に一通り板目をみてすべての壁に並べて
確認後に貼り始めました。ほぼ無節の板は、言いよう
もないほど美しいものです。

こういう瞬間にいつも思うことは、彼ら(素材)が、
いちばん喜ぶ作り方をしてあげれば、何か作為を施さ
なくても、完璧な仕事をしてくれるということを
あらためて実感しました。


07.06.28


今日は。キッチンと薪ストーブの設置です。
キッチンは、今回もホリーウッドバデーの宮島くんに
お願いしました。今回は、始めてオープンキッチンに
しました。
もともと宮島くんの作るキッチンは、
家具として存在感のあるものですが、
オープンにするとますますその存在感が際立ちます。
やはり既製品のキッチンは、置くことは出来ないこと
を再確認しました。

それと今日は、薪ストーブの設置も行ないました。
薪ストーブは、オリジナルで作ることも考えたりして
さまざまな選択肢の中で、お施主さんは結局ヨツール
のクラッシックタイプのものを選択しました。

最近は、建築家がデザインしたものや職人のオリジナ
ルのものありますが、ヨツールのクラッシックタイプ
のものやシガータイプのものを見ると、その伝統のな
かから生まれたデザインに勝るものはなかなか見出せ
ないような気がします。

シンプルでモダンなものがもてはやされる昨今ですが、
その時代の流れの中で少し立ち止まって
自らの目で真偽を見極めようとした時に
今まで見えなかった何か新しいものを発見することが
あります。それは、新しい自分を発見したような喜び
です。

そんな刺激が与えられる家でありたいと思っています。


07.07.21


無事オープンハウスも終了し、今日は引渡の日となり
ました。

始めてお会いしてから、約3年が経ち、今日は区切り
の日となりました。クライアントはもちろんですが、
多くの方々に支えられて、今回も悔いなく満足のいく
仕事ができました。本当にありがとうございました。

普遍性を求めたこの建築は、住まい手によりいっそう
の想像力を求めるものでありますが、ひるがえしてそ
れは尽きることのない新しい発見を住まい手に与えら
れる建築であると信じています。

この建築によってクライアントの今後の人生が、より
いっそう豊かなものになることをお祈りしてこのコン
テンツを終了したいと思います。

長い間おつきあいありがとうございました。